光通信において、現在より短い距離により高い増幅が実現できれば、装置の小型化など多くの利点が考えられる。しかしながら、より短い距離において光増幅を実現するためには、従来よりも高い濃度の希土類イオンを添加する必要がある。励起光強度・信号光強度に適応した希土類イオンの濃度分布・光路の断面積などを設計し、現状の増幅効率の高効率化への試行を行うことが本研究の目的である。従来の利得等の光増幅の特性を見積もる方法においては、添加する希土類イオンの濃度が比較的低いために、励起光や信号光の誘導吸収・誘導放出は十分に考慮されてたが、希土類イオン間のエネルギー移動等は十分に考慮されてこなかった。したがって、導波路等への適用には、実測によるしか方法がなかった。そこでまず、本研究において用いるガラス系におけるこのエネルギー移動速度を検討することが、先の設計の重要な要素と考え、実測とともに、理論的な検討を試みている。 まずは、モデルケースとして、ZBLAN(ZrF_4系フッ化物ガラス)中のEr^<3+>に着目し、吸収スペクトル・蛍光スペクトルを実測及び計算から求め、1480nm光励起による利得効率の波長依存性・励起光強度依存性を求めることができた。これに、エネルギー移動速度・多フォノン緩和速度を考慮したrate方程式を用いることにより、これらの値を見積もるための実測条件を検討している。これまでの計算結果からは、0.4mol%Er^<3+>の添加で既にその利得効率の低下は避けられない結果となった。現在、このエネルギー移動速度・多フォノン緩和速度を実測より求め、rate方程式の信頼性の向上とその方程式を持ちた希土類イオンの濃度分布の設計を試みる予定である。
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