【目的】 形状記憶合金の逆変態温度(Af)については、従来から広く使われてきたTi系では100℃まで、TiPd系で500℃、Ni-Al-Fe-Mn系で650℃の形状記憶相変態が確認されている。しかし、とくに、宇宙往還機の耐熱翼や航空機タービン翼、高温耐熱金属・セラミックス系複合材料開発などには、1000℃以上で作用する超高温型(Ultra-high Temperature)SMA開発が不可欠になってくる。本発表では、高温(超高温)域で作動する形状記憶合金(SMA)系としてRu(ルテニュウム)-Ta(タンタル)系を取り上げて、その可能性を調べた。 【方法】 融点が3000℃のTa(タンタル)と2300℃のRu(ルテニュウム)を、ほぼ同じ原子比で混ぜ合わせ合金化させた。この(アーク溶解した)合金を原料として用い、不活性Ar(アルゴン)雰囲気容器内部に設置された、円錐型の高周波誘導水冷Cuコイル内で電磁力で非接触浮遊溶解させて、その後も下側に位置する電磁場コイル中を絞り込み滴下させ、高速回転合金鋼ロール上で急冷凝固させる“電磁浮遊ノズルレス急冷凝固法"で作成し、板厚60μmから1mm程度の切片状小型試験片を作成した。 【結果】 形状記憶現象を起こす結晶相変態を調べる熱分析(DSC測定)結果からは、試験片(材料)内部への熱吸排熱現象が1200℃付近に認められ、小型試験片(20mm長さ)を用いた高温炉内(900℃〜1400℃)での3点支持曲げ試験結果から、それまでの低温度側では、中央部上方支点から下方に押さえられていた試験片に1250℃〜1350℃で曲げ反発力(形状回復応力)が現れ、変位(形状)変化の発生が起こっていることが分かった。さらに、高温レーザ顕微鏡による合金表面の金属組織観察(図1参照)からも、その温度付近で表面に細かい凹凸状の縞模様の出現(微細双結晶)が認められ、それらは高温側温度変化に伴って出現・消滅を繰り返し、形状記憶結晶相変態現象が働いていることがわかった。
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