本年度は、基礎的検討として、種々の条件下での両親媒性溶質(界面活性剤、アルコールなど)分子の吸着構造形成過程を原子間力顕微鏡(AFM)によりin-situ観測するとともに、吸着種の分子論的モデル化を重点に検討したその結果、以下のことが明らかになった. <in-situ観察> アルカン溶媒中では、微量の水分の混在で付着力が激増するが、アルコールを混入すると界面活性効果により付着力が減少するまたHLB値の低い非イオン性界面活性剤の添加でも同様の傾向が見られた.HLB値の高い界面活性剤では、長距離引力が発生するとともに表面近傍では吸着層による立体反発斥力が観測されたこの吸着層は、雲母表面のAFM像によっても確認された. 高分子水溶液中の雲母板に吸着した高分子一分子をAFMを用いて識別することに成功し、溶解条件や溶液条件により吸着構造が異なることを確認した. <分子動力学シミュレーション> 粗視化された分子モデルを用いた分子動力学計算により、アルコール・水混合溶液中における親水性コロイド粒子の表面間力を評価した混合溶液はバルク中では単相として安定に存在しているが、両表面がアルコール分子の長さ以下まで接近すると表面間隙の近傍でアルコール・水の液液相分離が起こり、表面間に水の架橋による強い引力が生じることを初めて見いだした.その引力はアルコール濃度が約90vol%のときに最大値を示し、この値はアルコールの疎水基が長くなるにつれて増加した.これらの結果は、AFMによる実測データと少なくとも定性的に一致した.
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