本年度はイオン交換と錯体形成に関して検討を行った。まず中心金属に関して、いくつかのスクリーニングを行った。その結果、当初予定していた鉄は酸化数が変化し易いため、コバルト(II)、コバルト(III)を候補として選定した。また配位子としては予定通りEDTAを用いた。EDTAはゼオライト骨格中からアルミニウムを取り出してしまう物質として著名であるが、我々の用いた条件ではファジャサイト型ゼオライトの骨格を破壊することはなかった。そこで、骨格をファジャサイト、配位子をEDTA、中心金属をコバルト、対象ガスをNOと想定して検討を進めた。 ファジャサイトはナトリウム型であるので、このナトリウムをコバルトにイオン交換する条件を確定した。ICP質量分析より、イオン交換がほぼ進行すること、X線回折によりゼオライト構造が壊れていないことを確認した。その後に、錯体はゼオライトの入り口細孔径よりも大きいため、Ship-in-Bottleの手法を用いて、ゼオライト細孔中でその場合成した。X線回折によりゼオライト構造が壊れていないことを確認した。 このように調製した配位子のあるサンプルとイオン交換しただけのサンプルに関して、センサーの予備実験として可視紫外領域で分光測定を行った。合成直後の状態では、水が金属に配位していること、またその吸収は600-800nmにつよくあらわれることがわかった。 ファジャサイトZSM-5型、Y型薄膜の合成を行う予定でいたが、すでにX型薄膜の合成には成功しており、今回の結果から、錯形成に際してはその結晶構造が壊れないことがわかったので、来年度は粒子形態のまま、まずイオン交換と錯形成したサンプルに対してセンシング実験を行い、その後に薄膜への展開を検討する。
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