本研究の目的は、生物的増幅技術を用いて、環境中の毒性汚染物質を高感度かつ迅速に検出できる発色遺伝子システムの開発である。本研究は、環境毒性汚染物質(重金属)関連遺伝子を対象としており、毒性汚染物質の分解酵素および解毒関連タンパクのプロモーターとグリーン蛍光タンパク(GFP)のcDNAを組み込んだプラスミドを用いる。プラスミドカセットとして(1)メタロチオネイン、(2)n-アルカンオキシゲナーゼを用いる。本年度は初年度にあたり、次の項目を実施した。 1. 生体材料の調製およびレポーター遺伝子の開発:培養細胞として、酵母Candida albicans KULM83-0300および糸状菌Cladosporium resinaeを培養した。このうち、酵母Candida albicans KULM83-0300に重金属として銅を作用させると、メタロチオネインが誘導されることが明らかとなった。そこで、このタンパク質のN末端アミノ酸配列を決定し、これに基づきcDNAの解析を行った。 2. プラスミドの細胞内導入条件の確立:実験材料として、イネの培養細胞を用いた。カリフラワーモザイクウィルス35SRNAのプルモーターにグリーン蛍光タンパク(GFP)を結合したプラスミド(p35S-GFP)をイネ培養細胞に導入した。導入方法は、加圧法を用いた。その結果、1日後にはGFPの蛍光が観察された。このことにより、GFPを用いた発色遺伝子システムの基礎的知見が得られた。
|