導電転移温度を有する材料は、面状発熱体として床暖房に、さらには電気毛布の素材として注目されているにもかかわらず、今のところ実用化に向けての試験段階である。これは、温度上昇にともなう電気抵抗値が再現性に乏しく、数多くの加熱ー冷却の繰り返しが不可能であったことによる。我々は、この問題をできるだけ解決し、実用化への第一歩として、極めて電気抵抗ー温度の関係が高い再現性を持つポリエチレン(PE)ーカーボンブラック(CB)の複合材料の開発をゲル法により成功した。この成果は高分子の物性に関するプラハ会議(IUPAC共催)で発表(7月20日)した。しかしその時点ではなお、最大抵抗値と室温での抵抗値との差が小さかったが、その後の改良によって、特に低分子量PEと超高分子量PEをCBに混入して試料を作成したところ、抵抗値の差が大きな試料を得ることができた。特に科学研究費を得ることができ研究が飛躍的に進んだのは、それまで、抵抗値の温度依存性を測定する装置を学外の研究機関に依存していたので必要な時に測定ができなかったが、装置の試作後は研究が進んでいる。さらに機能性に富む試料の作成が可能になれば、無理なく次の研究が推進され、学生に対する教育・研究の柱となることが期待される。なお、研究に際しては、さらに多くの機能、特に低温測定が可能なように装置を改善した。低温装置は液体窒素域での測定が可能となり、この研究は来年度においてr将来軽い超伝導試料の開発研究のために装置が活用できることを期待している。
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