研究概要 |
一般に,乱流遷移は100万程度のレイノルズ数で起こるとされているが,宇宙往還機等が経験する高マッハ数・高エンタルピー流においては,主として機体耐熱材のアブレーションによる表面噴き出し効果や2次振動モード「マックモード」の発達、 化学反応による温度摂動の成長あるいは減衰等が原因で、遷移条件がレイノルズ数だけでは予測できないことが指摘されるようになってきた. 研究代表者はCFD(数値流体力学)を用いて,耐熱材表面のアブレーション率と遷移レイノルズ数の関係を調べた.2方程式乱流モデル(k-epsilonモデル)と,極超音速流の解析スキーム(ASUM)を組あわせた計算は,オーソドックスなアプローチながら,世界でも初めての試みであったが、1万程度のレイノルズ数で遷移が起こるという実験結果を数値計算でも再現することができ、新しい流体的な遷移促進メカニズムを提案することができた.本研究は,将来の日本の再突入カプセルやHOPEの様な有翼宇宙往還機の耐熱材開発において,乱流遷移による加熱率上昇の危険性を予測する基礎の理論となるものと期待されている。 本研究の成果の一部は数値流体力学シンポジウムや宇宙航行の力学シンポジウム、国際宇宙技術および科学に関するシンポジウム、アメリカ航空宇宙学会の熱物理および熱伝達に関する会議(AIAA Paper 98-2941)等で発表され、日本航空宇宙学会誌(1999年1月号)に掲載された。
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