研究概要 |
本研究はカンショにおけるプロテインホスファターゼ2A(PP2A)の役割を明らかにするため,PP2A遺伝子の発現様式とβ-アミラーゼ,スクロースシンターゼ(SUS)及びスクローストランスポーター(SUT)遺伝子の発現様式を比較・検討した. PP2Aの部位別(葉身,葉柄,ほふく茎,若根及び塊根)のノーザンブロット分析では,各部位で1.9kbのバンドが検出され,mRNAレベルでは若根で最も高かった.塊根形成過程(苗植え付け後14日目,21日目及び28日目)の根では14日目にPP2AのmRNAレベルが最も高く,その後減少した.この時,β-アミラーゼやSUSのmRNAレベルは塊根形成とともに高まり,PP2A遺伝子の発現様式と一致しなかった.一方,SUTのmRNAレベルは塊根形成とともに低下し,PP2A遺伝子の発現様式とよく一致した.次に,葉身を付けた葉柄の切断面から6%スクロース溶液を吸収させたところ,葉柄のβ-アミラーゼとSUSのmRNAレベルが高まったが,PP2AとSUTのmRNAレベルは変化しなかった.更に,成熟葉のPP2AのmRNAレベルは幼葉と比較して高く,これはSUTのmRNAの発現様式と一致した. 以上の結果より,カンショのPP2A遺伝子の発現様式はβ-アミラーゼやSUS遺伝子の発現様式と一致せず,SUT遺伝子の発現様式とよく一致することが明らかとなった.
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