イチゴ'とちおとめ'の70%着色果実を均一に収穫し、不溶性キトサン及び可溶性(低分子)キトサンでコーティング処理後、1℃及び5℃で保蔵した。その結果、可溶性キトサンの効果は明らかではなかったが、不溶性キトサンの鮮度保持効果をイチゴでも確認できた。すなわち、1℃保蔵ではその差が明確でないが、5℃保蔵では0.5%及び1.0%キトサン処理で水分損失、可溶性固形物増加割合の抑制、果実着色の抑制等に無処理果実、キトサン溶解のための酢酸のみ処理果実などと比べ、効果が明らかに認められた。さらにキトサン処理をした後、純粋培養した灰色かび病菌(Botrytis cinerea)を果実に接種した。電顕による観察から不溶性及び可溶性キトサン処理果実で、分生胞子の発芽、生長が抑制されていることが認められた。 同様にニホンナシ'豊水'果実に1%キトサンを0.3%酢酸で溶解して処理を行い、1℃で貯蔵した。この際、果皮全面コーティングばかりでなく、半面、1/4、1/8分割コーティング処理も併せて行った。その結果、前年同様キトサン処理は'豊水'果実の熟度の進みを抑制したが、半面、1/4、1/8分割コーティング処理果実も果皮着色、果実硬度、呼吸量などに影響を及ぼして、全面処理の効果には及ばないものの鮮度保持効果のあることが判明した。全面処理果実の果実内部ガス、特にCO2やエチレンが高濃度となり、off-flavorの発生要因となることが懸念された。一方、半面、1/4、1/8分割コーティング処理果実では無処理果実と比べるとガス濃度は高いものの、全面処理果実ほどではなかった。このように、MA効果を維持しつつ、内部ガスを過度に高めることのないキトサンコーティング処理の方法が開発できたと考えている。現在、これらの抗菌効果について、キトサンのエリシター機能に注目しキチナーゼ活性を調査中である。
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