研究概要 |
緑熟バナナ′Cavendish′を入手し、分子量の異なるキトサン(低分子:10,000、中分子:600,000、高分子:1,000,000)でコーティングして、13℃下で保蔵中の果実品質の変化を調査した。その結果、追熟まで高分子キトサン塗布果実は25日を要したのに対し、中分子、低分子キトサンではそれぞれ20日、17日であった。キトサン処理果実は水分損失、でん粉分解、テクチャの低下等が抑えられ、明らかにバナナにおいても鮮度保持効果が認められた。典型的なクライマクテリック型果実であるバナナ果実の呼吸及びエチレン生成のピークは、キトサン処理によって遅延する傾向があった。このようにキトサンコーティングは最大一ヶ月の保蔵を可能とした。 一方、高分子キトサンの腐敗抑制効果を明らかにする目的で、キトサンコーティングしたニホンナシ′豊水′及び′新興′果実の果皮に、純粋培養した灰色かび病菌(Botrytis cinerea)を接種し、キトサンのエリシター作用を検討した。すなわち、PRタンパクのキチナーゼ活性が高まるか、否かを調査したが、果皮タンパク中には明らかにキチナーゼ活性は認められるものの、高分子キトサン処理果実で特段に多い傾向があるとは認められなかった。これは高分子キトサンが組織内部に浸透せず、キチナーゼ活性を促すエリシター作用が示せなかったためと考えられ、高分子キトサンの抗菌作用は、キチナーゼ以外のPRタンパク、あるいはファイトアレキシンの誘導や、構造的な防御反応などがその機作と推定された。今回、検討できなかったより低分子キトサンを用いて、エリシター作用の更なる解明を試みる必要がある。
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