研究概要 |
アワノメイガおよび近縁/同属のアズキノメイガについて性比がメスに偏る現象を詳しく調査し、それがすくなくとも2種類の原因によることを明らかにし、さらにこれらのメカニズムと遺伝様式、Wolbachia感染との関連性を検討した。 1997・1998年に関東地方、東北地方の6地点(千葉県松戸市、東京都文京区、東京都田無市、新潟県佐渡ケ島、宮城県古川市、青森県黒石市)でメス成虫を採集し,アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)67家族とアズキノメイガ(O.scapu1alis)184家族を確立した。そのうち、それぞれ9家族、16家族がメスに偏った性比を示した。Wolbachiaに特異的な16SリボゾーマルDNAのブライマーによる母親の卵巣から抽出したDNAに対するPCR法によって、アワノメイガでは翼常性比9系統中6系統に、アズキノメイガでは異常性比16系統中11系統にWolbachiaが検出された。メスに偏った系統のメスと正常系統のオスをかけ合わせたところ、アワノメイガでは9系統中6系統、アズキノメイガでは16系統中15系統で性比異常が母性遺伝することが確認された。性比異常が母性遺伝した系統に抗生物質(テトラサイクリン)を処理したところ、アワノメイガについては調査したWolbachia感染系統、4系統がすべてオスばかりに、アズキノメイガについては調査した14系統のうち、Wolbachia感染系統、10系統がすべてオスばかりとなった。これはバクテリアによって起こされたオスからメスへの性転換という考えで説明できる。一方、アズキノメイガでは残りの4系統については抗生物質による効果がみられなかった。さらに、その4系統にはWolbachiaの感染は見られなかった。 以上の結果より、メスに偏った性比異常はアワノメイガ、アズキノメイガの日本各地の野外個体群に低頻度で存在すること、それらの多くはWolbachiaによるオスからメスへの性転換であることWolbachia以外の原因によるメスに偏った性比異常も存在することがわかった。
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