研究概要 |
1. セリシンの抗酸化性の機構解明 セリシンの抗酸化性がFeとのキレーションにより起こるのではないかと考え、セリシンとFeとのキレート形成能について検討したが、その結合能は弱いものであった。また、Feにより脂質過酸化が促進される条件でセリシンの効果を検討したが、やはりFe依存的な過酸化促進条件では、セリシンの抗酸化能は弱く、Feとのキレーションによる機構の可能性は否定された。一方、脂肪との親和性がある程度強力であることが確認され、セリシンの抗酸化性の一部の機構として、脂肪の周りをセリシンが取り囲み活性酸素の攻撃から防御しているのではないかと推定した。 2. セリシンの抗菌性の検討 28種類の大腸菌、かびなどの菌株を用いて抗菌性の試験を行ったが、一部の菌株のみ弱い抗菌性が確認された他は、全く抗菌性は確認されなかった。 3. セリシンの生体調節機能の検討 コレステロール添加食をラットに摂取させ、高コレステロール血症を誘起させる条件で、セリシン添加(3〜5%)の影響を調べたところ、セリシンによる若干の血中コレステロールの低下傾向が確認された。1,2-ジメチルヒドラジン投与マウスでの大腸癌発現に及ぼす影響を調べた。その結果、短期の試験(5週間)では、食餌へのセリシン3%の添加で顕著な前癌病変のアベラントクリプト数の減少が見いだされ、大腸癌発現を抑制する可能性が示された。興味あることに、セリシン摂取によりマウスの脂肪組織重量の減少も見いだされ、セリシンは肥満にも有効である可能性が出てきた。
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