魚類ミオシンは哨乳類のそれに比べ不安定である。タンパク質の立体構造はアミノ酸配列の一次から始まり、基本構造の二次、そして立体構造の三次の順に構築されている。生理的条件で機能を果たしている魚類ミオシンに尿素、および熱エネルギーなど、構造破壊因子を加えていったときの二次、および三次構造の変化を円偏光二色性によるヘリックスの減少やキモトリプシン消化性から検討した。ミオシン分子は熱安定性の異なる数種のドメインから成り立っていることが両方法から知られた。そのうち、最も安定性の低い部分はミオシン尾部のC端40kDa(40kLMM)であった。一方、最も安定な部分は尾部のN端40kDa(40kS-2)であった。それらの中間部分および、頭部は中間の安定性を示した。これに尿素を加えていくと、ドメインとしてのそれぞれの安定性の違いを残しながら、次第に低温で構造破壊が起こった。さらに、同様な尿素存在下において消化温度を変えてキモトリプシン消化を行った。二次構造の破壊が起こる条件では(尿素濃度が低いときは高温で、尿素濃度が高いときは低温でも)、尾部での消化パターンが大きく変り、小断片が生成するようになった。すなわち、ミオシン分子のモルテン-グロビュール状態と思われる構造を尿素により作り出せ、その結果、構造安定性は頭部に接続したrod部分が重要な役割を果たしているであろう事が推定された。
|