研究概要 |
本年度は,(1)食品安全性情報の生鮮食料に及ぼす影響を分析する枠組みを構築し,1996年に発生した狂牛病騒動とO157集団食中毒事件の生鮮食肉・生鮮野菜消費への影響を数量的に分析すること,(2)O157食中毒事件への現地の対応を調査し,今後の食品安全性対策のあり方を検討することを目的とした. 1. 生鮮食料需要を,価格・所得と当該食料に関し家計が知覚している安全性の関数にモデル化した上で,家計の主観的な安全性レベルを利用可能な安全性/健康リスク情報の関数と想定し,当該情報量を全国紙の狂牛病およびO157集団食中毒の報道量によって代用・測定した.以上のモデルに基づいて牛肉とレタスの家計需要に対する安全性情報効果を計測した結果,当該月の報道記事数とその累積数で捉えた外部情報の量的側面と,特定年月のダミー変数で捉えた外部情報の質的側面の両者が,これらの品目需要に有意なインパクトを与えたことが確かめられた. 2. 堺市教育委員会において,O157集団感染の経緯とその後の対策について聞き取り調査を実施し,O157食中毒の発生後給食施設の改良を行っているがドライ・キッチン施設にするためには多額の費用が必要で,地方政府レベルのみでは十分な対策が講じられ得ないこと,また,長野県経済連における調査から,堺市での中毒発生後一時的に,長野産生鮮野菜の市場価格が下落し風評被害を受けたが,影響は半年後には消失し,被害額は直接原因食品として取りざたされたカイワレほど大きくなかったことがわかった.
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