研究概要 |
植物の栄養成長と生殖成長の季節的なパターンは,長日植物と短日植物では異なっている。自然界では,長日植物の多くは短日時期(冬季)に生殖成長を開始し,一方,短日植物の多くは長日期(夏期)に開始する。この原因について植物学は未だ説得力のある,説明ができていない。我々は,この説明の一つに,冬季と夏期に於ける,光合成有効放射に占める青色光と緑色光の量的な変化に注目した。 短日植物としてアサガオと稲を,長日植物として小麦とパンジーを供試詐物とし,発芽後のステージにより,単色光の青色光,緑色光,赤色光のLEDランプを10時間と14時間, 2〜7日間照射した後,自然光に戻した。。その結果,アサガオにおいては, 10時間の青色光で多くの花芽を受けた。稲における平均出穂日は青色光と赤色光で自然光より12日早まった。 また,小麦においては青色光で自然光よりも,14時間も10時間照射も12日間平均出穂日が遅くなった。パンジーでは花の数が緑色光で早く咲き,青色光で少なかった。 ま太陽光による着色フィルム透過光のもとで,上記作物を栽培したところ,人工光と似たような結果が得られた。このことは,太陽光の季節変化と関連づけて考察すると合理的にとなることが判った。 自然界における青色光と緑色光の季節的なわずかな変動量が栄養成長と生殖成長のバランスに影響するのであれば,季節的変動程度の波長分布を人為的に変えることにより,植物(作物)の栄養成長と生殖成長の制御の可能性が示唆される。
|