食肉組織は水に不溶性であるため、食物素材としては固体としての形態のみで利用されてきた。そのため、良質のタンパク質供給源にも関わらず、牛乳や大豆タンパク質に比べてその利用範囲が著しく狭い。従って、食肉の高度利用を計るためには、従来の固定概念に囚われず、斬新な思考で取り組むべきである。その一つの可能性は、低塩濃度下で液状にすることによって食肉の利用形態を革新することである。本研究では、家畜・家禽の骨格筋の筋原線維タンパク質を蒸留水に可溶化する方法の確立を試みた。その結果、挽き肉を中性pHの低イオン強度溶液で洗浄した後、超音波処理することにより、筋原線維タンパク質の80%以上を可溶化することができた。この方法により、鶏胸筋、鶏腿肉および豚ロース肉の筋原線維タンパク質の可溶化に成功した。このことは、本方法を用いることによりあらゆる種類の家畜・家禽の骨格筋を可溶化することができることを示しており、低塩濃度下で溶液状の食肉を食品素材として利用できる展望が開けた。次年度は、本法による筋原線維タンパク質の可溶化の機構を明らかにすると共に、具体的な実用化の道を追究したい。
|