本年度の研究計画として、昨年に引き続き「カモシカの農作物利用実態」と「耕作地非依存カモシカの生活」をあげ、調査頭数を増やすことで、精度の向上を目指した。 1)カモシカの農作物利用実態:山形市において、6月から11月にかけて1回/日テレメトリー法により5頭の位置を特定し、昨年のデータとともに解析した。行動圏の平均面積は、117.6haで、そのうち26.3ha(19.5%)が林地以外(耕作地、草地、植物園、クワ畑、その他)であった。林地以外での発見割合は個体により有意に異なった。本年は秋田県の一般農家の耕作地約640m^2を計2305時間昼夜ビデオ撮影した。耕作地にはアズキ、ダイズ、インゲンマメが播種された。耕作地内への侵入は220回で、そのうち農作物の摂食が214回、耕作地内の通過は3回、繁殖期の追従行動が3回であった。侵入開始日から最終日までの86日間で、0.4日に1回の侵入であった。滞在時間は15.1±14.7分/回、摂食時間は13.8±11.2分/回で、いずれも9月に有意に長かった。時間帯別では、6-18時までの侵入は56回、18-6時までは164回であった。4頭のカモシカが観察され、内3頭は成獣の雄1頭、雌2頭で、1頭はその幼獣であった。駆除が行われてきた山形市での状況と全く異なり、秋田県での進入行動は量的にも質的にも強いものであった。 2)耕作地非依存カモシカの生活:本年は宮城県で調査した。カモシカは広葉草本には6・9月に高い嗜好性を示したが、7・8月に選択性はなかった。落葉広葉樹には7月に嗜好性を示すが、6・9月は選択性はなかった。昨年の山形市での調査とあわせて考えると、落葉広葉樹にはほとんど選択性はなく、広葉草本には高い嗜好性を示し、その他の植物に対しては忌避を示すと考えられた。
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