研究課題/領域番号 |
10876059
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
佐伯 和弘 近畿大学, 生物理工学部, 助教授 (10298937)
|
研究分担者 |
松本 和也 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (20298938)
細井 美彦 近畿大学, 生物理工学部, 助教授 (70192739)
|
キーワード | 動物 / ウシ / 胚 / 形質転換 / 遺伝子発現 / モザイク / 共焦点レーザースキャン顕微鏡 |
研究概要 |
ウシにおいて、外来遺伝子の初期胚前核への顕微注入法により形質転換動物の生産が報告されている。しかし、その効率はマウスに比べてきわめて低く、0.1%程度である。遺伝子注入胚を受卵雌に移植する前に形質転換胚をあらかじめ選別できれば、生産効率は飛躍的に向上するものと思われる。本研究では、ルシフェラーゼ遺伝子をマーカー遺伝子としてウシ前核に注入し、その生物発光により選別が可能かどうか検討している。 ニワトリβアクチン/ホタルルシフェラーゼ(β-act/luc)融合遺伝子を、40μg/mlの濃度で、体外成熟・受精で作製したウシ胚前核に注入した。これらの胚を培養して発生させた。授精後の時間から6時間間隔で72時間まで、イメージングフォトンカウンターを用いて胚の発光を観察した。、胚は、授精後60時間以降で発光を開始し、その割合は、5.4〜14.4%だった。しかしながら、発光は、胚全体ではなく、一部の割球の発光によるモザイク発現であった。このことから、次に、注入した遺伝子の胚内での分布と発現の関係を調べた。あらかじめ核酸標識試薬(LabelIT)でローダミン標識したβ-act/luc遺伝子をウシ胚前核に注入した。遺伝子の胚内での分布を調べるため、遺伝子注入後、経時的に共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM)で観察した。胚内の遺伝子の量を蛍光強度で調べたところ、経時的に減少していくことが観察された。遺伝子注入直後は、注入した前核に多くの遺伝子が観察でき、細胞質内にも拡散した遺伝子が確認できた。卵割した胚では、一部の割球の核に蛍光が観察され、モザイク状に遺伝子が分布していることが推測できた。また、発光胚の割球を単離してLSMで標識遺伝子の検出を試みたが、蛍光検出はできなかった。以上のことから、外来遺伝子を注入したウシ胚はモザイク発現が多いこと、注入遺伝子はモザイク状に胚割球に分布し、核内に局在していることが確認できた。今後、発現胚が遺伝子導入されているかどうかを検討するため、発現胚のウシへの移植による形質転換動物の作製や導入遺伝子の染色体上への取り込みをFISH法により検討する予定である。
|