研究概要 |
アポトーシスは、形態学的には細胞萎縮、核濃縮、核分断化を特徴とし、細胞死機構の解明に重要な位置を占める。精巣内の減数分裂は種の保存に欠くことのできない生物現象であり、その間の細胞死は多くの因子によって制御されていると考えられる。我々はマウス精巣内のアポトーシスをTUNEL法ならびにDNAラダー検出法で観察したところ、MRL系統のマウスにおいて無視できないほどの陽性像を検出した。 材料としてマウス10系統を使用した。C57BL/6,C57BL/10,CBA/J,DBA2,C3H/He,SL,BALB/c,NJLにおいてTUNEL陽性細胞の出現する精細管は約10%前後であったのに対し、MRL^<+/+>,MRL^<lp/lp>では、約35%であった。1精細管中に出現する陽性細胞数は前者で1-2個、MRL系統では6-7個で、20個以上出現する精細管も約5%存在した。HE染色との連続切片観察の結果、陽性細胞はステージ12のM期精母細胞に一致していた。ステージ12に出現するM期の死細胞数は、MRL^<+/+>でC57BL/6の約25倍であった。さらに、MRL^<+/+>精巣では明らかなDNAラダーが検出された。電顕的に、MRL^<+/+>ではM期精母細胞の特徴的な細胞死が多数観察された。 以上の所見から、MRL系統のマウスは他系統のマウスに比較して減数分裂中期特異的にアポトーシスの出現することが伺えた。減数分裂中期特異的に細胞死が出現する意義は現在のところ不明であるが、精子形成過程にみられるチェックポイントの一つを解明する有用なモデルと考えられる。
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