マウスの着床・胎盤形成過程において、顆粒性間膜腺細胞と呼ばれる子宮NK細胞が有意に出現する。今回、3種類の遺伝子改変あるいは遺伝子破壊マウスモデルにおける子宮NK細胞について検討した。(1)IL-2ノックアウトマウスで、子宮NK細胞が分化したことから、IL-2以外のサイトカインが分化因子であることが示唆された。(2)IL-2Rβ鎖過剰発現遺伝子改変マウスで胎盤形成期に流産が誘発された。これはIL-2Rβ鎖の過剰発現により、IL-15が子宮NK細胞のきわめて低い細胞傷害性を増強させた可能性が示唆された。(3)日本産野生マウス分娩後の子宮における成熟型子宮NK細胞の存在は本マウスでの子宮NK細胞がFasを発現しないことによることが分かった。(4)子宮NK細胞欠損マウスTgE26では、間膜腺と基底脱落膜内の放射状動脈の分岐が不完全で、特に胎盤形成期での蛇行や迂曲が見られず、血管内皮の肥厚が見られた。このため、局所での高血圧が起こり、流産が誘起されたものと示唆された。(5)β2ミクログロブリンノックアウトマウスでは、流産は誘起されず、まったく正常であったことから、栄養膜MHC発現は妊娠維持機構にとって本質ではないかもしれない。
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