Notchによる細胞分化制御について、ニワトリのB細胞分化の中枢器官であるファブリシウス嚢を対象にして研究を行った。Notchのリガンドの一つであるSerrate2が、ファブリシウス嚢濾胞の髄質と皮質の境界に存在する基底膜に沿った上皮に強く発現されており、Notch1は、髄質B細胞の中でも上皮に近接したB細胞に発現していることが確認され、ファブリシウス嚢におけるB細胞の分化ならびに多様性の形成にNotchが関与している可能性が示唆された。また、細胞株を用いた解析から、活性型Notchを発現させることによって、Notchシグナルの下流に存在する抑制型の転写因子であるHairy-1の転写が上昇し、免疫グロブリン遺伝子H鎖の転写がそれに伴い、著しく抑制されることが判明した。また、NotchシグナルはB細胞において、増殖抑制活性をもつことも明らかになった。以上の結果から、Notchは、ニワトリのB細胞分化において、すでにB細胞系列にcommitした前駆細胞を分化のシグナルを抑制することで一定数保持し、さらに免疫グロブリン遺伝子の転写を抑制することで、Ig gene conversionによる免疫グロブリン遺伝子の多様化を抑制しているものと考えられた。
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