本萌芽的研究の端緒となった実験事実は、ビタミンBlを文献値の1000倍(100mg/L)添加したMMN培地において、外生菌根菌テングタケ、とショウ口を23日間培養したところ、培地のpHが各々5.5から2.8、2.7に低下し、有機酸合成の促進が予想されたことであった。そこで、このpH低下とビタミンB1添加との関係をまず明らかにした。しかし、文献値の通り(100μ9/L)ビタミンB1を添加しても、pHは同様に低下することがわかった。従って、ビタミンB1の添加量と培地pHの低下とは関係がないことがわかった。 そこで、第二のテーマである、共生培養系において生産される有機酸の機能を解明することとした。まず今年度は、外生菌根菌ハツタケとアカマツとの共生無菌培養系を確立させた。グルコース、酵母エキスを含むバーミキュライト中前培養したハツタケに、別途無菌的に調製したアカマツの実生を植え、無菌的に3ヶ月培養した。その結果、アカマツの乾燥重量は、共生系では非共生系の約1.3〜1.5倍に増加した。直根の長さ、側根の数も、共生系では非共生系の最大2倍、3倍まで各々増加した。さらに、菌根の形成も3ヶ月間の培養で認められた。 一方、共生培養系、又、ハツタケのみの培養系において主要な有機酸としてシュウ酸が同定された。その他、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、も微量同定された。これら有機酸はリン酸供給を促進する「生物肥料」効果をもたらすものであり、ハツタケ菌糸体の成長、アカマツ根の形状に対する影響に関し現在検討中である。
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