末梢運動神経損傷モデル(ラット舌下神経損傷モデル)を用いて神経障害時の各種遺伝子発現応答の違いをin situハイブリダイゼイション法によって検討した。 生後4週のラットを用いて我々が行った実験では、軸索損傷後には各種成長因子の受容体、それら受容体の下流に存在する細胞内情報伝達分子、フリーラジカルの消去系分子、グルタミン酸毒性防御因子、などが神経軸索損傷後に発現の低下を示した。そこで、これらの遺伝子応答が、老齢モデルとされる生後約44週のラットや2年のラットにおいてどのような発現を示すかを検討した。本年度は神経栄養因子の受容体のうちGDNFの受容体であるcRet、GFRa-1、LIF受容体のLIF-R、NGFの低親和性のp75、BDNFの受容体のTrkBについて検討した.これらはいずれも生後4週では損傷後発現上昇することが明らかになっている。神経軸索切断後の運動ニューロン細胞体での遺伝子発現は、4週、44週、2年でいずれも著明な違いは認められなかった。ただ、LIF受容体においてのみ若干応答が低下する傾向が見られた.今後はこれらについての例数を増やすと同時により詳細な検討が必要と考えられる。また、フリーラジカルの消去系の分子としてSODやグルタチオンリダクターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼについて検討したが、これらに関しても明らかな応答の違いが認められなかった.次年度の問題点として、生後2年のラットは実際に老齢モデルとして適しているのかどうか若干の考察が必要と考えられる。また本年度検討した分子以外の候補分子についても検討する予定である.さらに、筋由来の栄養因子についても検討する必要があると考えられる。
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