研究課題
パーコールの自動密度勾配遠心法とショ糖不連続密度勾配遠心法の二段階の細胞分画により、Sf21細胞から比較的夾雑物の少ないゴルジ膜を精製することに成功した。この膜画分を抗原として、マウスハイブリドーマクローンを作成し、Sf21細胞の光顕的および電顕的免疫組織化学染色により、ゴルジ装置を特異的に認識する抗体を産生しているものをいくつか選び出した。現在、このうち14F10抗体と12B1抗体について集中して研究を進めている段階である。14F10はN-アセチル-β-グルコサミニダーゼを特異的に認識する抗体であることが判明した。本酵素は、哺乳類では典型的なライソゾーム酵素であるが、昆虫ではそれ以外に膜結合性酵素として存在し、糖鎖の合成過程に関与することが既に示唆されていた。またゴルジ装置に存在することも推定されていたが、直接的な証拠は示されていなかった。14F10抗体により、本酵素のゴルジ局在性が明確に示されたことになる。更に詳細に局在を検討し、この酵素分子の生化学的研究を進める予定である。また12B1抗体は分子量約85000で、ゴルジ膜の内腔壁に強く結合した可溶性タンパク質を認識していることが分かった。精製抗原のアミノ酸配列分析から、哺乳類のあるゴルジタンパク質に類似する配列を部分的に持つことが示されたが、残りの部分は既知のタンパク質と高いホモロジーを示さなかった。面白いことに、12B1は哺乳類のほぼ同じ分子量のタンパク質と交差反応したが、これはゴルジタンパク質でなく、核タンパク質であった。これらの一次構造の解析を現在進めている。
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