研究概要 |
血管平滑筋細胞は,動脈硬化症を惹起する基礎病態である高脂血症,高血圧,糖尿病などの疾患に於て重要な役割を演じる。一方,細胞質および核に存在する種々の蛋白質には、セリンやスレオニンにN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が1つだけOグリコシド結合したO-GlcNAc型糖が存在することが近年明らかになった。このO-GlcNAcは,糖尿病との関係で最近注目を集めている。UDP-GlcNAcはO-GlcNAcの供与体であり、高濃度のグルコースによってもたらされる細胞内UDP-GlcNAcの増加は、ある種の蛋白質のO-GlcNAc化の異常をもたらすことが予想されている。今回、O-GlcNAcならびにO-GlcNAc転移酵素の糖尿病との関係を明らかにする目的として,ラット大動脈由来平滑筋細胞におけるO-GlcNAc転移酵素の発現の高濃度グルコースによる変化を生化学的並びに組織細胞化学的に検討した。 その結果,ラット大動脈並びに大動脈由来平滑筋細胞に於るO-GlcNAc転移酵素の局在を検討してみると,O-GlcNAc転移酵素は主に核内に存在し,また細胞質にも瀰慢性に存在することが明らかになった。さらに電顕観察より,O-GlcNAc転移酵素は,主に核内の真正クロマチンならびに細胞質基質に存在が確認された。 さらに,高濃度グルコース存在下で平滑筋細胞を培養すると,O-GlcNAc転移酵素の活性が増大し,さらに核および細胞質に於るO-GlcNAc転移酵素の染色性の減弱が認められた。このような高グルコースによるO-GlcNAc転移酵素の活性の変化は,さらに細胞内でのある種の蛋白質のO-GlcNAc化の変化をもたらすと考えられる。
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