研究概要 |
[目的]O-GlcNAc転移酵素は,蛋白質のセリン残基あるいはスレオニン残基に,UDP-GlcNAcからN-アセチルグルコサミンをO-グリコシド結合で転移する。最近、本酵素のcDNAがヒト,ラット,線虫などでクローニングされた。ヒトの種々の臓器における遺伝子発現をNorthern bolt法で調べたところ他の臓器に比べて膵臓で非常に強く発現していることが報告されている。このことからO-GlcNAc転移酵素は,膵臓においてインスリン分泌やグルコース濃度の調節に関与することが示唆されており,糖尿病との関係が注目を集めている。今回、正常並びにストレプトゾトシン糖尿病ラット膵臓におけるO-GlcNAc転移酵素の局在を免疫組織化学的に検討した。 [方法]SD系ラット(雄,体重150g)にストレプトゾトシン(65mg/kg)を腹腔内注射後,経時的に膵臓を採取し,ホルムアルデヒド固定の後,O-GlcNAc転移酵素に対するポリクローナル抗体を用いて免疫染色を行なった。 [結果]光顕的に観察すると正常な膵臓では,O-GlcNAc転移酵素は外分泌部の腺細胞,グルカゴンを産生するランゲルハンス島A細胞ならびに膵ポリペプチド(PP)細胞に強陽性反応が認められた。またこのようなO-GlcNAc転移酵素の局在はO-GlcNAcの局在とほぼ一致することがすることが明かになった。ストレプトゾトシン胞では正常と比較して染色強度の増強が観察された。O-GlcNAc転移酵素活性は糖尿病ラット膵臓では正常よりも有意な上昇が認められた。 [考察]O-GlcNAc転移酵素並びにO-GlcNAcはチモーゲン顆粒あるいはランゲルハンス島A細胞のα顆粒の分泌に関与すること,さらにB細胞における蛋白質へのO-GlcNAcの修飾の変化が糖尿病と関連することが示唆された。
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