Long QT Syndrome(LQTS)の遺伝子解析により見つかった2種類のKチャネル(HERG、KvLQTl)に対し、Isk蛋白がどのように作用するかを調べるために、Isk変異体cRNAをマウス心筋細胞に導入することを試みた。微小電極による圧注入や遺伝子銃による注入を試みたが、成功しなかったため、cRNAではなく、cDNAをliposome法により細胞内に導入した。liposomeを用いた場合でも、培養心筋細胞への導入は他の培養細胞に比べ、効率が非常に悪かった。各種liposomeを試したところ、Fugene 6による導入が最も効率がよかった(1-2%)。内匠透博士(神戸大学)から供与されたrat Iskの変異体遺伝子(D77N)をgreen fluorescent protein(GFP)遺伝子を持つプラスミド(pTracer-CMV2)に挿入後、transfectionを行い、GFPが発現している細胞で全細胞電流を記録した。また、Iskのantisense oligonucleotideとGFP遺伝子のcotransfectionを行い、同様に全細胞電流を記録した。遺伝子導入していない細胞では、ゆっくり活性化する遅延整流K電流(Iks)が観察された。antisense oligonucleotide導入細胞では遅延整流K電流が記録されないか、あるいは、速く活性化する遅延整流K電流(Ikr)が観察された。また、D77N変異体遺伝子導入細胞では、遅延整流Kチャネルの活性化と脱活性化時間の短縮が観察され、電流はIkr電流の特異的な拮抗薬であるE4031で一部抑制された。以上の結果から、Isk遺伝子が遅延整流K電流のうち活性化の遅いIksの発現に強く関与することが、Kチャネルが実際に機能発現している心筋細胞において明らかになった。Isk蛋白がKvLQTlチャネル蛋白と連合してチャネル活性を示すことが、示唆される。
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