研究概要 |
平成10年度(初年度)は4.1タンパク質と膜の相互作用について、自己相関蛍光測定法(FCS)による基本的な検討を行った。 ヒト赤血球膜から精製した4.1夕ンパク質とその膜結合ドメイン(30kDa)を蛍光標識(Rhodamine)し、種々のリポソーム (PSのみ、PCのみ、両者混合)、バンド3再構成PCリポソーム、赤血球膜の反転膜小胞と混合し、FCSを用いて"蛍光分子のゆらぎ"を記録し、拡散定数、分子の大きさを測定した。測定条件は赤血球内の生理的条件(130mMKCl,20mMNaCl,pH7.4)とし、蛍光標識タンパク質濃度はレーザーの共焦点領域に1〜2分子存在する濃度(10^<-8>M)とした。 4.1タンパク質をPSリポソームと混合すると"ゆらぎ"の振幅が増大し、両者の結合が示されたが、PCリポソームには結合せず、PS/PC混合リポソームではPSの割合の増加に伴い結合率が増加した。この4.1タンパク質-PS間の特異的結合は、さらなるPSリポソームの添加でも変わらず、その他の生化学的検討結果と合わせて疎水性結合であると考えられた。一方、4.1タンパク質はバンド3再構成PCリホポームおよび反転膜小胞に結合し、既知の4.1タンパク質-バンド3間の結合がFCSでも確認された。これらの結果は膜結合ドメイン(30kDa)でも認められ、30kDa上にPS、バンド3との結合部位の存在が明らかになった。 FCSによる溶液中での単一分子の検出は、タンパク質分子と膜の相互作用解析にも十分適用できると考えられ、次年度は、タンパク質の修飾(リン酸化)、調節因子(カルモジュリン)の結合・解離の効果について検討する。
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