研究概要 |
我々は、過酸化水素によるストレスがEGドレセプターなどのチロシンリン酸化を強く促進することを見出した(Gamou&Shimizu,FEBS Lett,1995)。さらに、マウス及びヒト培養細胞から過酸化水素により活性化されEGFレセプターをチロシンリン酸化するキナーゼ活性の存在を明らかにし、これを酸化ストレス応答チロシンキナーゼOxidant-Stress activated tyrosine Kinese:OSKと名付けた。本研究ではOSKの遺伝子クローニングを目的に、OSKの粗精製を進めた。OSK活性はヒト細胞のみならず過酸化水素刺激したマウスA9細胞のTrilon X-100可溶性分画にも検出された。これをイオン交換カラムで分画したところ、活性は約80KDaの過酸化水素依存的にチロシンリン酸化される蛋白の出現と一致し、SrcキナーゼのN端を認識する抗体と抗ホスホチロシン抗体がこの蛋白を認識した。現在これらの抗体を用いてマウス肝cDNA発現ライブラリーからのクローニングを進めている。また、免疫沈澱法で精製したキナーゼ活性欠損変異型ヒトEGFレセプターを基質としたin vitroリン酸化反応でOSKの性質をさらに検討した。OSKの活性化には、Srcキナーゼの活性化に必要なMgイオンは要求されず、レセプター型チロシンキナーゼの活性化に必須のMnイオンが必要であった。さらにSrcキナーゼを阻害することが知られているHerbimycinやGenisteinはOSKを阻害しなかった。従って、OSKはSrcと構造的な類似性を示すが異なる特性を持つチロシンキナーゼであることが明らかになった。
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