Na+駆動型モーターのエネルギー変換ユニットあるいはイオンチャネルに対応すると考えられる遺伝子(motX、motY、pomA、pomB)を我々は同定している。H+駆動型モータータンパク質MotAとMotBとの相同性から、PomAとPomBは複合体を形成してNa^+チャネルとして機能していると考えられている。長極毛株のスワーム能を回復する遺伝子のクローニングを行ったところ、長極毛株のスワーム能、遊泳速度、極べん毛タンパク質構成、べん毛の形状などの全ての変異において、ほぼ野生株と同じようになるDNA断片を得た。この断片は、V.alginolyticusの近縁種V.parahaemolyticusのmotX遺伝子の上流領域と高いホモロジーを持っていた。この領域は、non-coding配列であることから長極毛株の変異を直接的に相補するのではなく、おそらく間接的に抑圧しているのであろうと考えられた。欠失プラスミドの解析から、σ^<54>プロモーター配列様の領域が重要であることが示された。pomAとpomB遺伝子はσ^<28>プロモーター配列を持ち、連続して転写されると考えられている。これに対しmotYはσ^<54>保存配列をもつ。また、V.parahaemolyticusでは、4つのモーター遺伝子の他に、いくつかの極毛に関する遺伝子がクローニングされており、σ^<28>またはσ^<54>プロモーター配列を持つことが示されている。さらに、最近V.alginolyticusのσ^<54>をコードする構造遺伝子が、当研究室でクローニングされ、極毛の形成に関わっていることが示された。おそらくPMF209はσ^<54>サブユニットに結合し長極毛株における極毛遺伝子群の発現を抑えているのではないだろうかと推測される。以上のことは、ナトリウムイオン特異的べん毛モータータンパク質の発現制御の解明に寄与すると思われる。
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