研究概要 |
環境汚染物質に対するより広範な高危険群(遺伝的感受性者群)の掘り起こしに、遺伝子モニタリングの使用を目指した。 本年度の目標は、1)重金属耐性酵母の至適検索条件を見いだすこと。2)ゲノムライブラリー導入酵母における重金属耐性コロニーの安定した回収条件の設定を行うことであった。 実験材料として以下の酵母を用いた。対照酵母:W303B株(MAT α his3 carl-100 agel leu2 tryl ura3)にベクター(プラスミドYEp13;ロイシン合成遺伝子む含む)のみを導入した酵母。ロイシンを含まないSDM培地中で成育可能。 実験酵母:酵母美込ライブラリーをベクターYEp13により対照酵母中に導入して得られた遺伝子導入酵母。 また、人への有害金属として、イタイイタイ病原因物質および内分泌撹乱物質と見做されているカドミウム(以下Cd)をモデル物質として取り上げ、Cd耐性を与える遺伝子(導入した既知の遺伝子ライブラリー由来)を保有する酵母株の検索をした。 実験結果 1) 酵母のCd感受性の確認:対照及び実験酵母について、SDM(-Leu)寒天培地で、CdCl_2O,20,25,30,40,60μMに対するコロニーの成育状況をみた。プレート1枚当たり5×10^3個、培養条件は30℃、3日間とした。繰り返し実験の結果、ほとんど成育しない濃度30μMを耐性株の選択に用いた。 2) 実験酵母からのCd耐性株の検索:上記選択条件で対照及び実験酵母について静置培養、その結果得られたコロニーを白金耳で直接同一条件の寒天培地に線上に再植え付けしてCd耐性酵母を確認した。10万個当たり24の耐性株を得た。 3) 導入遺伝子によるCd耐性獲得実験酵母の選別:得られた実験酵母のCd耐性は、突然変異による自然耐性及び導入遺伝子による耐性の2つの機構により獲得される。そこで導入遺伝子による耐性株のみを検出するため、培地の条件を変えて(選択培地)検索する方法とレプリカ法^<5)>を応用して選別・同定した。3)-1選択培地によるCd耐性獲得酵母の選別:SDM(+Leu),-Cd液体培地条件で増えた20株について、16プレートで耐性が保持されていた。4株で不安定ながら導入遺伝子由来Cd耐性が確認された。3)-2 レプリカ法による導入遺伝子Cd耐性酵母の検出・同定:上記のSDM(-Leu),CdCl_230μM寒天培地で得られた16のCd耐性株について遺伝子の突然変異による自然耐性株と区別し、導入遺伝子によるCd耐性株のみを検出するために、レプリカ法及び選択培地のCd及びロイシン濃度条件を検討した。その結果、今年度は、3)-1で4株、レプリカ法により導入遺伝子由来Cd耐性酵母3株を得た。
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