研究概要 |
血清脂質に影響する飲酒、喫煙、運動習慣及び各種食品の摂取状況について質問票調査を実施し、鳥取県がん登録資料を利用して後ろ向きコホート研究を実施した。生活習慣に関する質問票調査の協力が得られたのは基本健康診査の初回受診者33,326人中4,993人であり、そのうち質問票の回答が得られたのは2,056人であった。そのうてい2,051人をコホートとして設定し、平成9年12月末まで鳥取県がん登録により追跡を行い、がん罹患者を同定した。がん罹患者総数は35人(男15人、女20人)で、胃(8)、結・直腸(15)、肺(3)、乳房(3)、前立腺(2)、その他(4)であった。がん罹患に対するTC、TG、HDL-CについてCox比例ハザードモデルによって求めた。TCについては低値群、高値群とも有意な結果は得られなかった。TGについては「150mg/dl〜」の群で男女とも有意ではないが、男性で高い傾向を示した。HDL-Cについては、「61mg/dl〜」の高値群で男性で0.23(95%CI:0.03-1.82)、ARR0.23(95%CI:0.23-1.88)、女性で0.83(95%CI:0.31-2.25)、ARR0.74(95%CI:0.25-2.15)と有意ではないが男性で低い傾向を示した。生活習慣要因によって影響を受けることは一般によく知られているガンは血清脂質と強く相関するretinolやβカロテンなどの抗酸化作用が重要な役割を担っている。我々の結果は抗酸化ビタミンを考慮して野菜の摂取なども含めた生活習慣要因を検討したが、これとは独立に血清HDLコレステロールが負のリスクであることが示唆された。HDLコレステロールは従来のがん死亡リスクの点だけでなく、がん罹患についても負のリスクとなる可能性が考えられると思われる。
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