手元にある異常ヘモグロビンの分析を行ったところ、ベーター鎖にアミノ酸の置換があることが確認された。さらに検査を進めた、ところ、N末端側1番目のアミノ酸がVALであるべきところLEUに置換されており、いわゆるHb Niigataと判断された。この置換部分にはMETが付加されており、ペプタイドの合成は次のようなデザインで行った。基本的な残基数を10とし、正常の一次構造を有するものをN末端から10番目まで、次いで、1番目がLEUに置換したもの、更に、LEUにMETが付加したもの(この残基数は11個となる)の3個のペプタイドを合成した。合成したペプタイドは抗HbA抗体やハプトグロビンとの結合性を検査するため、以前の研究で明かとなっている、これらの蛋白と結合する部位(ベーター137-146)、結合しない部位(ベーター91-100)のペプタイドを合成し、陽性対照、陰性対照として使用する。これら対照のアミノ酸残基は10個である。ネイティブのヘモグロビンサブユニット鎖やハプトグロビンは、今回の研究費で購入した低圧クロマトグラフィ装置にて精製した。精製した蛋白の純度はPAG電気泳動で観察するかぎり、90%以上と考えられた。次年度は合成したペプタイドを用い、生理的、免疫化学的検討を行う。 一方、新たなヘモグロビン異常者のスクリーニングは血液センターの協力で約2000余例実施したが、現段階では未だ見い出されていない。次年度の前半までスクリーニングは継続予定である。
|