研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は滑膜細胞の活性化と増殖により関節組織破壊を生じる慢性炎症性疾患であり、RA滑膜細胞の活性化にはTNFαやPDGF等のサイトカイン・増殖因子が関与していることが明らかにされてきた。そこで本研8究では、新たな治療法開発のためにRA滑膜細胞の活性化に至るこれらのサイトカインからの細胞内シグナル伝達機構を明らかにする目的で、JAK/STATやRas/MAPキナーゼ経路の活性化及びシグナル伝達に関与するアダプター因子の同定等を中心に解析を行った。まず、TNFαに関して感受性細胞株を用いた予備実験を行い、TNFαはJAK/STAT経路は活性化しないが、ERKおよびJNKの二種類のMAPキナーゼの活性化に至るシグナル経路を活性化するとともに、転写調節因子NF_KBの活性化を生じることを確認した。また、興味深いことに、最近私たちが造血細胞においてRas/MAPキナーゼ経路の活性化とインテグリン活性化を介した細胞接着の亢進に関与することを見いだした (Arai A.et al,Blood,in press)アダプター因子CrkL及びにその下流のシグナル伝達因子C3Gの過剰発現により、TNFαによるJNKおよびNF_KBの活性化が亢進するこを見出した。新鮮RA滑膜細胞では上記細胞株とは異なりTNFによる細胞の増殖抑制とアポトーシスの誘導が認められず、現在RA滑膜細胞を用いてこの違いをもたらす細胞内シグナル伝達機構の差異及びにその人為的制御法につき検討中である。さらにPDGFに関しても細胞株を用いて検討を行い、STAT5の活性化とPDGF受容体との結合等を生じることを確認した。PDGFは新鮮RA滑膜細胞の増殖を刺激することも確認されたので、現在RA滑膜細胞におけるJAK/STATの活性化と増殖誘導との相関及びにその制御法等につき検討を行っている。
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