研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は滑膜細胞の活性化と増殖により関節組織破壊を生じる慢性炎症性疾患であり、RA滑膜細胞の活性化にはTNFαやPDGF等のサイトカイン・増殖因子が関与していることが明らかにされてきた。そこで本研究では、新たな治療法開発のためにRA滑膜細胞の活性化に至るこれらのサイトカインからの細胞内シグナル伝達機構を明らかにする目的で、JAK/STATやRas/MAPキナーゼ経路の活性化及びシグナル伝達に関与するアダプター因子の同定等を中心に解析を行った。まず、TNFαにつき培養細胞株を用い検討下結果では、種々のJak/Statの活性化は認めなかったが、TNFαはphosphatidylinositol-3-kinase(PI3K)を介してAktの活性化をもたらすとともに、ERK・JNK・p38の3種類のMAPキナーゼを活性化する事を見出した。また、TNFαは転写調節因子NFκBの活性化を生じることを確認したが、種々の阻害剤を用いた検討にて、NFκBの活性化にはPI3KおよびERKの活性化が重要な役割を果たすことを見出した。一方、他の系にて報告されているp38の関与はTNFαによるNFκB活性化では認めなかった。TNFαによるPI3KおよびERKの活性化機構に関しては現在不明な点が多く、最近私たちが造血細胞においてRas/MAPキナーゼ経路の活性化とインテグリン活性化を介した細胞接着の亢進に関与することを見出した(Nosaka et al.,JBC 274:30154-62,1999;A.Arai et al.,Blood 93:3713-22,1999)アダプター因子CrkLの関与を含めて解析を行い、アポトーシスを制御しているNFkB活性化シグナル伝達経路を標的とした新規RA治療の開発に向けて検討を行っている。
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