持続的低酸素状態では換気反応は第一相の急性期には増加し、その後の第二相では緩徐に減少するという二相性の反応がおこることが知られている。第一相の換気増加に関しては、延髄孤束核中のグルタミン酸の増加が重要な役割を果たしていることが知られている。第二相の換気減少は低酸素換気抑制といわれ、主に神経伝達、調節物質の変化によって起こると考えられているが、その詳細は以前として不明である。本研究では、この低酸素換気抑制に関して、延髄孤束核での抑制性神経調節機構の関与を明らかにするため、持続的低酸素負荷下での同部におけるGABA放出の経過を測定し、またGABA受容体作動薬および拮抗薬を延髄孤束核にマイクロインジェクションし、換気反応に与える影響を検討することを目的とした。 1) 低酸素曝露時の延髄孤束核におけるGABAの反応 無麻酔、無拘束ラットを10%O_2に60分間急性暴露し、脳マイクロダイアリシス法により延髄孤束核で15分ごとに透析液を回収した。得られた回収液中のGABAを定量したところ、低酸素負荷30〜45分の分画で液中のGABAは低酸素負荷前の215%増加していた。 2) GABA拮抗薬のマイクロインジェクション 10%O_2負荷後、低酸素換気抑制が生じている40分の時点で、GABA-A受容体拮抗薬である(-)-ビククリンメチオダイドを延髄孤束核に10pmolマイクロインジェクションした。これにより分時換気量は218ml/minから292ml/minに上昇した。また低酸素負荷前に同部にGABA-A受容体作動薬であるムシモールを150pmolマイクロインジェクションすると、低酸素負荷時の最大換気量は380ml/minから266ml/minへ低下した。 これらの結果から、延髄孤束核において低酸素換気抑制にGABAergicなメカニズムが関与していることが示唆された。
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