研究概要 |
血管内皮細胞は一酸化窒素(NO)を産生・放出し、動脈硬化を防いだり、血管を拡張させているが、日本人に多い冠攣縮性狭心症の患者においては冠動脈内皮からのNOの産生放出が低下している(Circulation94:364-371;1996)。冠攣縮は主として夜間から早朝にかけて出現するが、一方、メラトニンは夜間睡眠中に松果体から分泌され日中にはほとんど分泌されない日内変動を有するホルモンである。最近、冠攣縮の機序に酸化ストレスの関与が示唆されているが、このメラトニンも強力な抗酸化作用を有している。冠攣縮患者ではメラトニンの夜間分泌が低下しており、それに伴う酸化ストレスの増加が冠攣縮の日内変動と関係している可能性がある。よって、冠攣縮性狭心症患者19例(61±1歳)と年齢の一致させた対照者24例にて2時、8時、14時、20時に採血し、血漿メラトニン値(pg/ml)をRIA法で、酸化ストレスの指標である血漿Thiobarbituric acid reactive substance(TBARS,MDA/ml)をTBA法で測定した。その結果、血漿メラトニン値は、両群とも2時にピークの日内リズムを示したが、冠攣縮患者群では対照群に比し、有意に高値を示していた。血漿TBARS値は2群とも、2時にピークの日内変動を示したが、両群間において有意な差はなかった。冠攣縮患者で夜間のメラトニン分泌の増加は過剰な酸化ストレスをさける代償機転である可能性があると思われた。 この結果の一部を1998.11月、ダラスでのアメリカ心臓協会学術集会(AHA)にて発表した。
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