1. 平成10年度は家兎において、頸部を露出させ自律神経を刺激する方法を確立した。これは自律神経系の刺激が、心臓にどのような影響を及ぼすかを解析するために必須の技術である。 特に頸部の迷走神経刺激と、交感神経星状神経節刺激が実現可能なモデルを作成できないと実験が出来ない。刺激は原則として電気刺激を用いた。その結果、セシウム誘発性の心室性不整脈を自律神経が修飾する事を明らかに出来た。即ち交感神経星状神経節刺激を5時間行った場合と2時間ではその効果は異なり、5時間刺激ではセシウムによる心室頻拍の誘発効果が減弱していた。しかし2時間刺激では減弱は認めなかった。これは一種のメモリー効果と考えられる。 2. 中枢神経系の中でも海馬は記憶、情動を制御する部位として知られている。上記研究課題を推進するために、単離した海馬ニューロンを用いパッチクランプ法にて循環動態への関与を検討する方法の確立を目指している。中枢神経系で、海馬の神経細胞を単離してその電気現象を解明する為に、現在ラットで海馬の神経細胞の細胞単離方法を確立しつつある。具体的には生後2週齢のWister-king ratをpentobarbital 40mg/kg腹腔内投与にて麻酔後断頭し、脳を頭蓋内より摘出後microslicerにて400μmの脳薄切片を作成する。脳薄切片は標準細胞外液にて60分間preincubate後、pronase(1mg/6ml)に31℃にて20-30分間incubationを行う。酵素処理後標準細胞外液にてwashoutを行い、脳薄切片より海馬のCA1領域をmicro-punch outし顕微鏡下にmicro Pasteur pipetteにて機械的にneuronの単離を行う。neuronがculture dishに接着後CA1 neuronの形態学的特徴を満たすpyramidal neuronを実験に供している。 この神経細胞の電気現象を現在検討中であるが、今後この方法を兎に応用する事により、兎の海馬の神経細胞の電気的活動を検討する。併せて、頸部自律神経刺激下あるいは中枢神経刺激下に心臓の電気的活動を同時に記録し、cardiac memoryと中枢神経系との関連を検討する予定である。
|