研究概要 |
冠動脈狭窄例および正常例について高感度センサーを用い、胸骨左縁第2、3、4肋問および胸骨右縁第2、3肋間で心音を記録した後、スペクトル解析を行い、冠動脈狭窄例の心音スペクトルの特徴を検討した。 1 拡張期心音スペクトルの特徴 狭窄例、若年健常例、非狭窄例、高度狭窄例に対して拡張期心音スペクトルを解析し、その特徴について検討した。その結果、スペクトル上、狭窄例では他の症例とくらべ600Hz台のパワー比が増大していた。また、経皮経管的冠動脈形成術を行い、左前下行技近位部の90%狭窄が0%に改善した症例の心音スペクトルについて治療前後のスペクトルの変化を比較すると、狭窄時にみられた600Hz台のピークは狭窄の改善に伴い消失していた。以上のように、600Hz台のパワー比増大は狭窄例に特徴的な所見と考えられた。 2 心音パワー比(600-699Hz) 狭窄群,若年健常群,非狭窄群,高度狭窄群について心音パワー比を求め、心音パワー比(600-699Hz)を指標とした冠動脈狭窄例診断の可能性について検討した。冠動脈狭窄例では若年健常例、非狭窄例または高度狭窄例と比べパワー比が高値であった。狭窄例のパワー比が高値となる記録部位は狭窄部位により異なり、左冠動脈主幹部および回旋技近位部狭窄例は胸骨右縁第3肋間で、左冠動脈前下行枝近位部狭窄例は胸骨左縁第3肋間で、右冠動脈近位部狭窄例は胸骨左縁第2肋間で統計学的有意差を認めた。末梢の冠動脈枝や近位部より末梢にかけて狭窄が連続している症例では統計学的有意差認めなかった。
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