研究概要 |
「目的」 カルシウムセンサー受容体(Cs-R)の機能獲得型異常症と推測される症例を対象にCs-R遺伝子の分子遺伝学的解析を行い、機能獲得型異常症の臨床病態の解明及び7回膜貫通型G蛋白共役受容体であるCs-Rの構造と機能を明らかにする。 「方法と結果」 解析対象とした2小児例においてCs-R遺伝子をPCR-direct sequence法にて解析し、1例に細胞外ドメインに存在するL125P変異と他の1例に第7膜貫通ドメインにあるA843E変異をそれぞれ同定した。家族構成員には遺伝子異常を認めず、患者はde Novo変異で発症したと考えられる。変異遺伝子の機能解析をHEK293細胞を用い細胞内Inositol,01,4,5-triphosphateの変動を指標として行い、受容体機能を恒常的に活性化する機能獲得型の異常の所見をえた。2症例における臨床像はほぼ同じで、新生児期にテタニーで発症し、また低カルシウム血症、高カルシウム尿症が認められ、副甲状腺機能低下症と診断されていた。 「考察」 機能獲得獲得型の遺伝子異常は家族性の高カルシウム尿症性低カルシウム血症で同定されているが余り多くはない。今回同定した変異はいずれも未報告の変異であり、遺伝子変異部位コドン125のロイシンは推定上のカルシウム結合部位に位置し、またコドン843はG蛋白との共役に重要と考えられる部位に存在する。今後同部位の詳細な機能を部位特異的変異導入法により解析する予定である。臨床的には、これら症例においてカルシウムセンサー受容体遺伝子変異を同定したことは、副甲状腺低下症と診断されている散発性高カルシウム尿症性低カルシウム血症を呈する症例の中に、同受容体遺伝子異常を有する症例が含まれている可能性が示唆され、また患者の治療方針の決定のために重要であるといえる。
|