研究概要 |
本年度はまず、ヒト肥満細胞の免疫染色における固定液の検討と3T3線維芽細胞との共生培養について検討した。その結果、Carnoys固定液での15分間での固定と,アセトン固定の比較を行うと,トリプタ-ゼ陽性細胞の割合は両者で差異は認められないが,キマ-ゼ陽性率はCarnoys固定液を用いた際に明らかに減少した。このCarnoys固定液による陽性率の減少は,固定時間に依存するものであった。さらに,アセトン,メタノ-ル,4%パラボルムを固定液として用いた際の固定時間の影響も検討した。アセトンは固定時間が長いと細胞が破壊され観察が困難となった。固定によらず比較的安定した結果が得られたのが,メタノ-ルおよびリン酸緩衝液中4%パラホルムであった。 一方、臍帯血由来ヒト培養肥満細胞は,マウス3T3、線維芽細胞との共生培養を行った際に,その生存が支持される。しかしなから,共生期間が3週間をすぎると、Feeder細胞である線維芽細胞がフラスコからはがれてしまうようになり線維芽細胞の生存を保つことが困難となり、肥満細胞め生存は維持できなかった。以上の結果から,培養肥満細胞は,生存したマウス線維芽細胞から産生される因子(おそらくはstem cell factor)によって,その生存が維持されるものと思われる。以上の結果より、臍帯血から得られる血液幹細胞をstem cell factorとインタ-ロイキン6共存下に培養して得られる肥満細胞は,従来報告されている比率以上に,キマ-ゼ陽性率が高いこと明らかにされた。来年度は、電顕による観察およびヒスタミン遊離の側面から検討する予定である。
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