研究概要 |
前年度までに、ヒト臍帯血から得られる血液幹細胞をstem cell factorとインターロイキン6共存下に培養して得られるヒト肥満細胞は,組織化学的には従来報告されている比率以上に,キマーゼ陽性率が高いことを明らかにした。したがって、培養中に何らかの形質転換が自発的に惹起されていることが推定された。そこで本年度は、このようにして得られたヒト肥満細胞を電顕的に観察し、粘膜型肥満細胞(MCT型)と皮膚結合組織型肥満細胞(MCTC型)との異同や同定に有用かを検討するとともに、形質転換の程度を電顕的に検証した。まず、組織化学染色に影響を与えた固定法について、電顕用固定液として用いられているカコジル酸緩衝液中4%パラホルムを用いて検討し、良好な結果が得られることを確認した。 共生培養した肥満細胞と線維芽細胞を,経時的に回収し通常の免疫化学染色を行い検討したが、キマーゼ陽性率の推移については,染色の非特異反応が強く充分な検討が行えなかったので、電顕的に両者を鑑別する特異的な形態的構造について検討した。 電顕での観察では,共生培養を行う以前の培養肥満細胞は,scroll、particulateなどの微細構造を有し,MCT型と形態学的には考えられた。しかしながら,マウス線維芽細胞との共生培養を行った後も,これら微細構造に変化はみられず,MCTC型肥満細胞に特徴的であるとされるcrystal、latticeなどの構造を確認することはできなかった。 以上の結果からは、電顕的観察によっても、線維芽細胞との共生による形質転換を確認するのは困難であることが示唆された。
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