研究概要 |
マイクロ線量計の開発には放射線の信号とノイズであるチェレンコフ光との区別が必須であることから、線量計の開発方針を探るために基礎実験として450-600nmの発光スペクトルをもつシンチレータからのスペクトル分布をシンチレーションカウンタにて計測した。その結果、光電子増倍管の分光感度特性に対応し,波長が大きくなるのにつれて両者の分離は難しくなるが、適当な感度特性を持つ光電子増倍管を選択して従来の電流モードでなく、パルスモードでの計測をすれば、広範囲の発光領域において信号を取り出せることが示唆された。このため、外径1.2mm(検出部0.8mm)、ウレタンチューブで遮光した光ケーブルを用い、パルスモード計測のできるマイクロ線量計用素子を試作した。これは、臨床応用でも使うことのできる程度の柔軟性を有している。放射性同位元素を利用して、波高分析を試みたところマイクロ線量計用素子がスペクトロメータとして使えることがわかり素子を波高分析器に接続することで、信号のみを計測することが可能とされ、マイクロ線量計の開発が原理的に可能であるとの見通しを得ることができた。しかし、1000Gy/時という高線量率の計測であるために、従来より放射線計測用として高感度を目指して開発されてきたシンチレータではパルスのパイルアップのため、かかる計測には適さず、臨床応用において要求される測定精度を得るためには、従来とは開発方向の異なる、高線量率の計測に適した感度特性をもつシンチレータを開発あるいは選択するとともに、適当な光電子増倍管の選択が必要であると考えられた。本課題の遂行により、今後の開発方針を得ることができたことから、高線量率組織内治療の計測に適したマイクロ線量計を完成させて実用化していきたいと考えている。
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