リンパ球、顆粒球などの血液細胞が多彩なシグナル伝達や活性化機構免疫応答を通じておこす過剰な反応が多くの疾病に関与している。生体内での細胞の活性化状態や体内分布や局在を測定する手段としてPET用の核種による血液細胞の標識が利用できるかを検討する基礎実験を始めた。[18F]FDGは、細胞のエネルギー源であるグルコースと同様に細胞に取り込まれるものの、以降の代謝が進まず細胞内にトラップされる性質がある。血液細胞が活性化とそれにひき続く一連のシグナル伝達過程中、共通のエネルギー源として[18F]FDGを取り込めばこれを細胞の標識として利用できるのではないかと考えた。 抗原特異的リンパ球を得るための抗原として先ず、病原性の無いヒツジ赤血球を利用した実験を行った。マウスを3群とし、1群はヒツジ赤血球で免疫する。2群はチオグリコール培地投与した腹腔マクロファージを増加させる。3群はコントロールリンパ球用マウスとする。培養瓶中でマクロファージと抗原であるヒツジ赤血球と前処理することによってマクロファージはMHC分子を介して抗原提示する。1群および3群マウスの脾臓からのリンパ球を抗原提示マクロファージとともに培養すると1群マウスリンパ球では抗原特異的リンパ球の活性化が起こるはずである。活性化反応は通常[3H]thymidineの取り込みによるDNA合成反応で観察するが、この活性化状態にあるリンパ球が[18F]FDGの取り込みについても第3群のコントロールマウスのリンパ球を上回ることが確かめられた。しかしながら本年度の実験からは、細胞への標識量が少なすぎ、次の段階に進むためには更なる工夫が必要であると考えられた。一つは抗原提示細胞をより強力にするためにマクロファージの代わりに樹状細胞を用意すること、一つは細胞集団を均一化した条件での標識効率の検討、さらには、[18F]FDG以外にも例えばグルタミンなど血液細胞のエネルギー源となりうる化合物での標識の可能性を検討したい。
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