ポリ塩化ビニールによる実験モデルの作成を急ぎ、種々のT1緩和時間を有するファントムに対しファーストスピンエコー法を基杢とするMRI、MTC画像の撮像を行った。ファントムは、水成分だけでなく今後は生体軟部組織に似た環境を作り撮像を続ける必要がある。ファントム実験に加え、T1強調画像で高信号を呈する卵巣嚢胞性腫瘍患者に対してMRI、MTC画像の撮像法の確立のために種々の撮像条件でMRI撮像を施行した。撮像条件については、現時点ではMTCパルスにより周囲軟部組織の信号抑制は可能で、骨盤内周囲組織と卵巣病変の境界は明瞭になった。造影剤投与時の周囲とのコントラストも明瞭となった。しかし、T1強調画像で高信号を呈する卵巣嚢胞性病変における造影剤投与後の増強効果の判定には、嚢胞部の信号の十分な信号の抑制が必要であるが、現時点では良好な信号低下が得られておらず、今後の課題である。さらに脂肪や粘液、血液などT1強調画像で高信号を呈する病変の信号を選択的に抑制するために、インバージョンパルスを用いた撮像法も検討し、種々のインバージョンタイムを使用し撮像中である。しかし、臨床応用に関しては、脂肪や粘液、血腫のT1緩和時間は個々の病変により異なるため、また同一病変内でも均一でないため、画一的なインバージョンパルスを使用しても対応できないことが明らかになった。そのため、今後は種々の病変に対しMRIを撮像し、T1緩和時間を実際に測定して、それに合ったインバージョンパルスを使用することにした。
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