MTCを用いたMRI画像を実際に卵巣腫瘍患者に対し撮像を行った。具体的には卵巣嚢胞腺腫、嚢胞腺癌、その他の悪性腫瘍、子宮内膜症性嚢胞、類皮様嚢腫、貯留嚢胞が対象疾患である。現時点では、それらの病変のMTC付加後の画像で、期待された充実部における信号の視覚的な低下が少ないため、充実性病変と嚢胞性病変の鑑別は困難なことが多く、卵巣腫瘍の良悪性の診断で重要な充実部の有無の鑑別は、今後MTCパルスの条件を変化させていく事で改善していく予定である。また、造影剤投与によるT1短縮効果は、MTC効果とは異なった機転であるため併用により充実部と嚢胞部の鑑別をより容易にするべく検討中である。MTCパルスはパルスの形、印加時間、強度、off-resonance周波数などいくつもの要素の組み合わせがある。問題点はSARが高値となるのでFDAの指針である平均SARが2W/kg以下、ピークSARが8W/kg以下に収めなければならず、MTC効果を最大限に引き出せない点であるが、制限値内での最も効果的な組み合わせについても検討中である。特にMTCパルス波形に関してはpulsed off-resonance irradiationとpulsed on-resonance irradiationの比較を行っている。また、類皮様嚢腫のような脂肪を含む病変に対しては、前年度に引き続いてインバージョンパルスを併用して撮像し、MTC効果との相乗効果を引きだしていく予定である。
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