研究概要 |
放射線抵抗性を獲得した接着性巨細胞を分離し、細胞生物学的特徴を同定する。 ヘパリン採血した末梢血を30Gyまでの高線量X線照射を行った。照射後リンパ球層を分離培養した後、細胞を回収し,AIM-V/2%human AB serum+human r-IL2(100IU/ml)で2週間培養し、以下の解析をおこなった。 1. フローサイトメータによる細胞表面マーカーの解析:回収した細胞を2〜4×10^6/mlに希釈した。分注した細胞にPE標識anti-CD3抗体(抗T),FTTC標識anti-CD13,14抗体(抗B),FITC標識anti-CD19抗体(抗単球/マクロファージ)を用いて蛍光染色してFACSで解析した。浮遊細胞は照射に伴いCD3陽性のT細胞が増加し、B細胞や単球/macrophageはほとんど認めなかったが、接着性細胞は逆に、CD3陽性細胞は減少し、単球/macrophageが増加した。B細胞は変化しなかった。 2. 光学顕微鏡による観察:培養後の浮遊細胞ならびに接着性巨細胞を別々に回収し、スメア標本を作製した。標本をanti-CD68抗体(抗ヒトマクロファージ)およびanti-LCA抗体(抗ヒトリンパ球共通抗原)を利用し、酵素抗体法で染色し、個々の細胞の由来を観察した。接着性巨細胞はanti-LCA抗体で染色されたが、anti-LCAでは染色されなかった。浮遊細胞は逆の結果であった。 4. サイトカインの誘導:接着性巨細胞の誘導に対し、培養液中のIL-1β濃度を経時的に測定したが、検出限界以下であった。 3. 染色体解析:照射後に誘導された接着性巨細胞にカリクリン A(100 nmol)を加えた後、低張処理後に固定した。この処理で分裂能のあるリンパ球では染色体標本が得られるが、接着性巨細胞では染色体標本を得られなかった。 以上より、高線量照射後に誘導された接着性巨細胞は単球/マクロファージ系であり、分裂能が極めて乏しいことが放射線抵抗性に関係していると考えられる。
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