研究概要 |
本年度は学内広報誌などで睡眠覚醒障害の啓蒙を行った結果、該当するのではないかとの自覚のある学生が多数保健センターを受診している。これらの症例に加えて、student apathyあるいは頻回欠勤者として保健管理センターで診療していた症例を検討し、精神分裂病や躁鬱病などの精神障害を合併している例を慎重に除外した。そしてこれらの症例の中で、睡眠覚醒障害(DSPS,non-24)の診断基準を満たす症例を睡眠覚醒リズム表のチェックなどから選び出し、それ以外の症例は従来の退却神経症の精神療法に準じた治療を行った。 該当する症例に、まずその時点でのsocial rhythm metrics翻訳版を2週間に渡って記入させ、生活の規則度をチェックした。チェックする前には、睡眠覚醒障害の症例でのかなりの不規則性が予想されたが、実際はnon-24では確かにかなりの不規則性があったが、DSPSの症例では健常成人とほぼ同様であり、また学生においては、全ての症例でかなり不規則であったことから、この評価スケール自体が記入する個人の社会的立場(学生か社会人かなど)に大きく影響されるものと考えられた。来年度以降はこの点について考慮した評価が必要であろう。 また備品として購入した体温ロガーとactitracを用いて、その間の客観的な睡眠覚醒状況と深部体温リズムの測定を行った。この結果、従来の報告通り、DSPSにおいて睡眠覚醒リズムの後退に伴って深部体温リズムの後退している症例と、後退していない症例が見られた。しかし、これは退却神経症的心性との相関は無いように思われた。また退却神経症の症例においても、いわゆるDSPS patternは認められたが、これらの症例ではビタミンB_<12>や光治療などへの反応性が悪いだけでなく、治療を求める態度そのものにも問題があった。
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