研究課題/領域番号 |
10877149
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀 正士 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (10238777)
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研究分担者 |
山口 直美 筑波大学, 臨床医学系, 助手 (90210369)
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キーワード | スチューデント・アパシー / 頻回欠勤者 / 退却神経症 / 睡眠相後退症候群 / social rhgthm metrics / ビタミンB_<12> / 光療法 |
研究概要 |
今年度も引き続き、スチューデントアパシーや社会人における頻回欠勤者などの、従来「退却神経症」として精神病理学的に共通であると考えられている患者集団を対象に、昨年度同様睡眠覚醒リズムと生活リズムの規則性に関して調査をおこなった。 その中で、2例の典型的な症例を論文として報告した。1例は大学院生の男子症例で、大学院にモラトリアム的進学をしたあげく、自我同一性の拡散状況に陥っているものであった。この症例では、実家に帰省し同一性の問題をつきつけられる場面から離れると睡眠覚醒リズムが直ちに正常化したり、自己の評価をされるようなゼミの発表当日に起きれず寝過ごしてしまうなど、睡眠相後退が現実逃避の一手段として用いられている感があり、いわゆる「motivated sleep phase delay」(以下MSPDと略)であった。しかしその一方で光療法に反応し、だるさなどの身体症状がとれたという事実もあり、睡眠相後退症候群(以下DSPSと略)の傾向が認められた。 もう1例は社会人の男性例であり、某研究機関の研究員となり数年目から頻回の長期欠勤が目立つようになった症例である。この症例も、先に挙げた学生と同様、週末などの仕事のない日には趣味のために朝早くから起きて活動するのに、平日はなかなかだるくて起きることができないという睡眠覚醒パターンであった。やはりMSPDが疑われたが、経過中に今度は典型的なDSPSの睡眠覚醒リズムへと変化した。 これらの症例から、退却的心性はMSPDパターンを示す傾向が高いが、その中でDSPSへ移行する症例も確かに存在することがわかった。退却神経症とDSPSは同じ個体に発生する可能性があり、その背景には従来指摘されている引きこもりによる社会心理的同調因子が減弱していることが大きく関係していると推察された。
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