研究概要 |
1,妄想の定義に関係する文献、言語論に関する文献を収集・整理を、前年度に引き続きおこなった。このために、補助金により購入されたパソコン・スキャナー・MOドライブを使用した。 2,妄想定義の問題については、従来の妄想定義の諸説を、対象と基準という二つの観点からまとめ直した。後者の妄想の判断基準は、更に、様相・内容・原因・その他の4つに分けて検討した。その結果、「妄想は誤った判断である」という通説は問題が多いことを報告した。 3,妄想の定義を研究するなかで、妄想概念の拡張が必要であることが分かった。この拡張によって、これも通説であった「メランコリー親和型は性格である」という見方は誤りであり、メランコリー親和型は妄想の一形態として解釈されるべきであることが示された。これに関する論文は現在投稿中である。 4,妄想を特徴付けるための補助テストとして構成した常識・見当識のテスト、及び論理的思考能力のテストを実際に使用してみたが、その標準化には、時間がかかりそうであった。 5,妄想の音声学的な分析については、補助金により音声分析ソフトを購入した。ただし、ソフトの完成が、遅れたため今のところ十分な分析結果は出ていない。 6,妄想的陳述の資料収集を、補助金により購入された録音器具を用いて、平成10年度に引き続きおこなった。その際、インフォームドコンセント及びプライバシーの保護には、できる限り配慮した。 7,平成12年度は、従来からの研究である妄想定義の問題・妄想の言語分析の問題を、情報論的な観点からも分析し、新しい妄想の評価法を探っていきたい。
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